『若恋』若恋編
近寄ってくるのはダークなスーツを着こなした連中ばかり。
「俺の好きにする」
「わかりました」
一礼してビシッとした男が去る。
今日はりおが楽しめるようにしてやりたい。
「わあ!金魚だあ!」
「わたあめ美味しそう!」
「クレープも売ってる!」
「オモチャも懐かしい!わたしね、昆虫セットの注射器で捕まえたトンボに針刺してたんだよ!」
「あ、」
りおの藍色の浴衣が翻る。
りおの前には見覚えのある。
忘れられない顔が見えた。
「りお!?」
「樹?」
なんて偶然なんだろうか?
一番会いたくない男が目の前に。
「花火大会来てたのか」
「うん、樹も来てたんだね」
「俺は部活の連中と。りおは?」
「わたしは奏さんたちと」
りおのくりくりした目がこっちを向いた。
同時に樹も振り向く。
視線がぶつかる。