鮮やかに青いままで

一つ傘の下、彼女と。

「…やっぱ降り出したかあ」



放課後下駄箱の前で、ぽつぽつと降り出した雨を恨めしげに睨む。



「へっへー」



背後、本当にすぐ後ろから、聞き覚えのある声がした。




「傘忘れたんでしょ。言ったじゃん雨降るよーって」




「忘れたっていう言い方はおかしい。最初から持ってくる気無かったんだから」



結局今日は学校ではほとんど綾桧とは話さなかった。

いや、普段とてそんな頻繁に喋るわけではないのだが。





「…屁理屈言う子は傘入れてやんないよ?」



「だぁから入れて欲しいなんて一言も言ってないっつの!」



「全くこいつは…
どうして人の忠告も厚意も聞かないかね」

溜め息をつく綾桧。



「……忠告ってか…傘を持って来なかったのは…まあ俺が悪いんだけど…傘入れる入れないは厚意とはまた別の問題だろ!」







「……恥ずかしい?」


綾桧がここぞとばかりに攻める。



「は、恥ずかしいとか…恥ずかしいとかじゃ、ないっ……あー、えと、何言ってんだ俺…」






あれ?








駄目だ。全然駄目だ。
冗談に冗談で返すどころか、完全に素で反応してしまった。




「あ…ははは、何照れてんの、なんか朝から変だよこーたろー…」
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