鮮やかに青いままで
『…俺、やるよ』


また利紀の声のトーンが下がる。





『どんなにお前と植本が仲良くても。どんなに植本がお前のこと好きやとしても』






その言葉に込められた覚悟は、綾桧が俺に向けて放ったものと同じ、あるいはもっと純粋なものだったろう。





『…ええんやな』



気付いている。

綾桧が俺を好いていることも、俺が綾桧を・・・






だからあえて俺は返事に時間をかけなかった。ためらえば、利紀の決断を鈍らせることになる。



「なに深刻ぶってんだよ。まあ万が一成功するようなことがあれば、そん時はなんか奢ったるから」



『はん、その軽口を後悔せんようにな!』


そう言い捨てて、利紀は電話を切った。





「…大丈夫だよ」


ツー、ツーと鳴っている携帯電話に呟く。


後悔なら、もうとっくの昔にし終わっている。
< 29 / 41 >

この作品をシェア

pagetop