鮮やかに青いままで
「そういや昨日なんであんな急いでたの?」


綾桧は嘲るような声で尋ねた。


「あんな雨降ってる中だーって走り出しちゃって。びっくりしたよ?」


「かーぜ引くっつの。…ま、その様子じゃ引いてないみたいだけど」

綾桧はそこまで言うと、水溜まりをひょいっと跳び越える。雨は明け方には上がっていた。



「俺は丈夫なの。昨日は、どうしても借りときたいDVDが…」


「言えばついてったげたのに」


「ピンクの暖簾の向こうまで?」



「……?」



「…っ最っっ悪。朝から何言ってんのこのエロオヤジ。死ね!」


時間差で俺の言葉の意味を理解した綾桧がべーっと舌を出す。



「ま、でも広太郎最近ちょっと変だったからね。そういう下品な冗談が出るんなら心配無いか」


「なに、俺は四六時中下ネタ言ってないと心配されんの?」


「んー?」


くすくすっと笑う綾桧。
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