鮮やかに青いままで
「雨降るらしいねえ」



「ふーん」



俺は息混じりの間抜けな声を上げ、空を見上げる。
西の空はただ赤々と燃え上がり、雲一つ見えなかった。





「…せっかく綺麗に散ったのに台無し」


綾桧は少しうつむき、桜色に染まった地面を見つめていた。




「…綾桧」



「なに?」



「なんか鬱入ってる?」



「…広太郎のせいかもよ?」


そう言うと、綾桧はあはっと顔をほころばせる。
こうやって見るとよく笑う奴だ。


俺はまた不自然な笑顔を返し、それ以上詮索することをしなかった。
その笑顔が本物かどうかさえ、掴めなかった。
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