鮮やかに青いままで
少し歩いて、海沿いの道まで出た。

ここから右の道を行くと綾桧の家がある。

俺の家は左だ。



「じゃね」


「おう、気をつけて」



一応薄暗い道を一人で歩く女の子を気遣う言葉をかける。





「広太郎」



自分の家の方に向かって歩き始めた俺の背中を、綾桧の少し低い声が呼び止める。




「あたしさ」



一つ一つ、俺の反応を待つかのように言葉を区切る綾桧。
半分水平線の向こう側に沈んだ夕陽がやけに眩しく、綾桧の表情はよく分からなかった。



「…どした?」



いつもなら良くも悪くもしゃきしゃきずばずば喋る彼女が、こんな風に言葉を選んでいることに少し違和感を覚えていた。
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