鮮やかに青いままで
「別れた」


散々言い淀んだ割に、肝心なところは拍子抜けするくらいあっけない口調だった。


弓道部、俺や綾桧より一学年下の後輩。

名前は確か福山…ケンイチだったかケンジだったか。
綾桧がそいつのことを話したがらなかったのでよく覚えていない。



俺と綾桧との付き合いはそれなりに長い。今の『別れた』がその彼と別れたことを意味していることくらい分かる。




「…そっか。 …いつ頃?」


今度はこちらが慎重に言葉を選ぶ。


綾桧が別れたことは薄々感づいていた。

だが正直このタイミングでそのことを告げられるとは思っていなかった。



「二月に、別れようって言って。…で春休み中に一回だけデートして…それっきり」
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