見えない色
見えない色

最初は手だった。


「川瀬さん、これまとめといてくれる?」
「あ、は……い」

あくまでも平然を装って書類を受け取る。
少し色の黒い、芸術品みたいなその手に一気に妄想が広がったことなど気づかれてはいけない。


それから、だ。

今までは気にも留めなかったことがフィルターにかけられてあたしを惑わし始める。



オフィスに遠慮がちに響く低い声。
狭い通路で肩がぶつかるくらいにすれ違って微かにわかる香水の匂い。
電話で商談をしている真剣な表情。


だんだん惹かれていった結果、あたしがたどりついたのは。




その静かな激情。


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