純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 ……よし、1度、考えをリセットしよう。

 そもそも、この女性が彼女とは限らない。妹や姉かもしれない。なんらかの恩人さんかもしれない。

 ……。

 ダメだ。やっぱり、いくら考えてみたところで、この女性が桐生さんにとってどんな人なのかが分からない……。


「……あ」


 ふと、とある名前が頭を過ぎる。

 もしかして、この女性が桐生さんが言っていたハルカさん……?

 確か、大切な人だって……桐生さんに喫茶店に連れていった時に、教えてもらったっけ……。


「……」


 心優しそうなその女性の微笑みは、まるで天使のよう。見ている私の気持ちが、安らいでいくような気がした。

 この人がハルカさんならば、桐生さんが大切な人だと言ったのも頷ける。この1枚の写真しかないけれども、本当に素敵な女性なのだと……この微笑みを見ていて思えてくるのだ。


「……篠原さん?」

「──っ?!」


 背後から桐生さんの声が聴こえて、私はその場で飛び跳ねた。


「きっ、桐生さん?!どうしてここに……? あ、アルバイトは……?」

「ああ……忘れ物をして、な。取りに戻ったんだが……──っ!」


 桐生さんは私の持っている写真を見て、両目を大きく見開き、驚いたような顔をした。
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