純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 一瞬、何が起こったのか分からなくて、……けれど、身体をきつく抱きしめられる温もりに、つぅーっと涙が伝った。


「すまない……。驚かせてしまって、すまない……」

「桐生さん……私……」

「だから泣き止め……。俺は篠原さんを泣かせたかったわけじゃないんだ。すまない、驚かせて」


 まるで、子供に言い聞かせているかのような優しい口調。優しい言葉。


「……俺、篠原さんに話すよ」

「え……?」


 やがて、桐生さんは決心したように言う。話すって……この女性のことを?話して……もらえるの?

 桐生さんは私から少し離れると、私の両肩に手を置いた。そして、真っ直ぐと私の目を見詰めながら言う。


「この写真は……。この写真に写っている女性は……前にも話した、俺の大切な人だ。……でも、今は篠原さんの方が大切だから」

「──ハルカさん」

「……え」

「この女性が……ハルカさん……なんですか?」


 桐生さんは無言で私の両目を見つめていたけれど、やがてコクッとうなずいた。


「ああ。……彼女の名前は、小野町 春香(おのまち はるか)」

「小野町……春香……さん」


 心優しそうなその微笑みに似合っている、素敵な名前。
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