純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「……彼女さん、ですか?」


 春香さんが桐生さんにとってどんな人なのか興味はあったけれど、聞くつもりなんかこれっぽっちもなかった。それなのに、私の口をついてその言葉は出てきた。


「……」


 桐生さんは何も言わない。やっぱり、聞いちゃいけないことだったんだ。それなのに、私は……。

 ああ……でも、口をついて出てきてしまった言葉を、取り消すことなんてもう出来ない。でも、言いたくないのなら言わなければいい。それだけのこと。

 無言のまま時間は流れていく。

 桐生さん、アルバイトには行かなくて大丈夫なんだろうか。いや、こんなことになったのは私のせいなのだけれど。

 しばらくの無言の末、ようやく桐生さんは口を開いた。


「……そうだ」


 それは、肯定の言葉だった。


「……っ」

「ただ、正確には、“彼女だった”」

「え……?」


 ──「……ごめんなさい」

 ──「……別に。謝るなよ。新しい彼氏と……幸せにな」

 ──「……うん」


「春香は……違う男性を好きになってしまい……悩んだ末、俺の側から離れていった。その男性のもとで幸せになるはずだった……。しかし、」


 桐生さんはそこで、いったん言葉を切る。
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