純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 マスターの言葉に、“桐生”と呼ばれた左目に包帯を巻いた男性は、俺の前の椅子に腰掛けた。

 無表情の辺り、怒っているのかどうなのかは分からないが……惹かれる何かを感じていたっていうのは、決して嘘じゃない。

 こうしてまた出会えたのも何かの縁だろうし、何より、俺はこの“桐生”という人間に興味がある。


「あっ、俺、本田洋佑っていいます」

「……ああ」

「あなたは……?」

「……桐生一夜、だったはずだ」


 答え辛そうに“桐生一夜”と名乗った、左目に包帯を巻いている彼は、俺と目を合わせようとはしない。もしかして、嫌われた?馴れ馴れしくし過ぎたか?

 どんよりと重い空気が漂っているのにも関わらず、不覚にも俺は笑ってしまった。


「……ぷっ」

「……何故、笑う?」

「いや、だって、“だったはずだ”って……!」

「……」


 桐生さんはムスッと顔をしかめて、俺を睨むように見つめている。……あっ、目を合わせてくれた。

 そんな桐生さんを見て、俺はすぐに笑うのをやめて謝った。桐生さんがそう言ったのは、きっと悪ふざけや冗談じゃないと分かったからだ。
< 144 / 349 >

この作品をシェア

pagetop