純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「刃物で殺されたって……」


 ──聴きたくない。


「犯人は、分からないそうだ」


 ──聴きたくない。


「暴力を振るっていた彼氏も、泣いていたそうだ……」


 ──聴きたくない。


「春香ちゃんさ、」

「……たくな……」

「両目を見開いて、悲しみのどん底に落とされたような顔をしていたって、」

「聴き……ない」

「噂で聴いたぞ」

「聴きたくないっ!!!」


 自分でも驚くくらいに大きな声が出た。でも、そんな大きな声を隣で聴いた佐藤は、俺以上に驚いている。

 しばらく無言が続いた後、佐藤は小さく謝り、申し訳なさそうな顔をしながら、俺の隣を離れていってしまった。


 ──ドンッ!!!

 帰り道、見知らぬ人の家の塀を、力いっぱいに殴る。


「……っ」


 殴る。殴る。殴る。


「うわあああああああああっ!!!」


 殴る。殴る。殴る。


「ああああああああああああっ!!!」


 手から血が出ても、手の骨が折れても、塀を殴る俺の手は止まらない。

 怒りだ。この気持ちは怒りだ。春香を殺した犯人への……そして、春香を守れなかった俺自身への、怒りだ。
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