純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 ……お母さんやお父さん、洋佑や警察の方は、まだ私のことを捜してくれているのだろうか。

 見つけてほしいと思うのに、見つかりたくないとも思うのは、やっぱり私が桐生さんのことを好きだから……。

 ……こんなの、異常だよね。私のことを監禁した男の人を好きになるだなんて……異常、だよね。それは自分が1番よく分かっている。

 絵を描いて時間を潰そうと、当初は何も置かれていなかった真っ白い棚の上に置かれている鉛筆とスケッチブックを手に取り、桐生さんが座っていたソファーに腰を落とす。

 そして、思うがままに鉛筆を動かして絵を描き出す。時間はあっという間に過ぎていき、気が付けば昼時になっていた。


「12時過ぎ、かぁ。昼ご飯、食べようかな」


 手を洗いに行ってから、桐生さんの作ってくれたサンドイッチの乗った皿に手を伸ばそうとした瞬間だった。

 ──コンコン。

 それは小さな音だった。けれど、驚くほどに静かなこの白い部屋では、その音がやけに大きく聴こえた。

 聞き間違えでなければ、その小さな音は、玄関の扉から……。防音の部屋に流れ込んできた、外からの小さな叩くような音。
< 191 / 349 >

この作品をシェア

pagetop