純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 頭の中がグルグルと忙しく回転していたら、やがて外から洋佑の声は聴こえなくなった。


「え……?」


 俯いていた顔を上げ、玄関の扉を見つめる。人の気配はしない……ように思える。


「洋佑?」


 うそ。もしかして帰っちゃった……?私はここにはいないと見込んで、帰っちゃった……?


「洋佑……」


 へなへなとその場にしゃがみ込む。


「あはは……」


 そして、力無く笑った。

 ……逃しちゃった。ここから出られるであろうチャンスを、私は逃しちゃった。多分、私はもうここからは出られない。

 それが良い答えなのか、良くない答えなのか、私にはどちらでも良かった。

 ……決められるはずが無かったんだ。桐生さんに惹かれてしまった以上、どちらかを決めるだなんて出来なくなってしまったんだ。

 私はなんて愚かなの……っ!


 ──バコンッ!


 玄関の扉が大きな音をたてた。突然の出来事に身体がビクッと跳ねる。

 まるで、何かかたいモノで扉を叩いているかのような……そんな音。


 ──バコンッ!バコンッ!バコンッ!バキッ!バコッ!バコンッ!


 しばらくの間、ずっと鳴り続けた音は、やがてピタリとやむ。
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