純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「一夜さんの隣にいた、腕を組んでいた女の人は……だれですか?」

「ああ。道に迷っていた人だ」

「……道に迷っていた人に、腕を組むのを許しちゃうんですか……?」


 女の嫉妬は醜いと聞く。一夜さんには、こんなことを聞いてしまう私が醜く映っているのだろうか。


「言い訳に聞こえるかもしれない、すまない。あれはただたんに拒む理由が見当たらなかったんだ。――だが!里桜が嫌だと望むのなら、もう誰にも組ませない」


 私と一夜さんが初めて出会った時、私は一夜さんが人形のように思えた。それほどまでに無表情で、簡単に感情を表には出さない人だった。

 今までに何度か強引に腕を組んできた人がいたとしたならば、きっとそれらすべても拒んではいないのだろう。

 人形が持ち主を選べない、持ち主に身を任せているのと同様に、一夜さんも人形のような心で、腕を組んできた人に身を任せていたのだ。

 拒む理由が見当たらない、という言葉に、私は納得した。


「全然言い訳なんかじゃないですよ。一夜さんの気持ち、分かっていますから。……でも、あまり腕は組ませないでほしい、かなぁ」

「分かった。もう、里桜以外の人には組ませない」


 私がそう言っている間、一夜さんは私の頬を伝う涙を指で拭ってくれた。
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