純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 それは、俺が誕生したことさえ帳消しにされるということで、当然、今まで生きてきた俺のすべてが消えるというわけで……。

 ──はて? 死神になるのと死神に殺されるの2択……人間にとってどちらか幸せで、どちらか不幸な選択なのだろうか?


「……」


 俺が今、この子供に殺されたら、里桜は俺のすべてを忘れて……どのようにして生きていくのだろうか?

 他に頼れる人はいるのだろうか? ──まあ、俺が里桜にとって、ちゃんと頼れる人間でいられたのかは分からないが。

 ひとりで何もかもを抱え込み、泣きはしないだろうか?他の男に変なことはされないだろうか?ちゃんと笑っていられるだろうか?

 そんなたくさんの不安の中、ふと、頭をよぎったのは……。


 ──里桜は、俺以外のだれかを好きになって、愛を育み、結ばれるのだろうか?


 その考えがよぎった刹那、言いようのない胸の苦しみを感じ、頭の中が真っ白になったような気がした……。


「……っおにーさん?!」


 俺は、怒りと嫉妬に我を忘れ、無意識のうちに机の上にあったハサミを手にとっており、今まさに、子供に向かって振り下ろそうとしていた。

 でも、最後の理性が、振り下ろすことを許してくれない……。
< 330 / 349 >

この作品をシェア

pagetop