純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 殺さなければ殺されるのに、あの時以来の〝人を傷付けたくない〟という思いが頭をちらついて、実行にうつすことが出来ない……。


「……っ」


 子供の大きく見開かれた赤い瞳が、ゆらゆらと小さく揺れている。


「クソがぁっ!!!」


 それは、俺が俺自身に対して、発した言葉。

 ハサミを子供とは逆方向に投げ、壁を握った拳で強く叩く。防音に加工されているため、いくら壁を叩こうが隣人から苦情がくることはない。

 ……やっぱり、出来ない。
 だれかを、もう、傷付けたくない……!!!


「……」


 子供はそんな俺をじっと見据え、やがて、にこりと微笑んだ。


「うん!合格!」

「……は?」


 意味が分からず、俯けていた顔を上げ、子供の方に目をやった。


「だから、合格★おにーさんを死神にはしないし、殺しもしないってこと!あっ、それは篠原里桜も同様にね!」

「……どういうことだ?」

「いやぁ~、たいていの人間って、僕が殺すって言った後……逃げるか許しを請うのどちらかなんだよね。おにーさんみたいに、僕に刃向かおうとしてくるのは稀で……殺すに値しないっていうこと」

「……?」

「まだ生きる気力がある人を殺しちゃったら、そのうち人類のバランスが傾いちゃうんだよ。死にたいと思っている人ばかりが生きている世の中になっちゃう」
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