純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 もう少しで目的の居酒屋につくといったところで、俺の携帯に着信がきた。この音楽は……ディスプレイを見なくても分かる、里桜からだ。

 すかさず電話に出ると、受話器の向こうからは舌足らずの里桜の声が聴こえてきた。


「一夜ひゃーん!すきぃっ」


 嬉しいラブコールだと思ったのもつかの間、里桜の近くにいるであろう女性のとある言葉は、俺の思考を停止させるには十分だった。


「ちょっ、里桜ちゃん!その抱き着いている人は鈴木くんよ!離れなぁ~さい!」



 里桜が、抱き着いている?いや、確かにそれも問題なんだが、抱き着いている相手が〝鈴木〟……だと?

 まさか。一度里桜を恐怖に陥れた、〝あの〟鈴木じゃないだろうな……?!

 そこから居酒屋につくまでの記憶は、あまりない。気が付いたら居酒屋についていて、入り口の扉を思い切り開けていた。

 荒々しい扉の開け方に、客はいっせいに俺の方を見るが、興味がないらしくすぐに視線を元に戻す。

 ……一部を除いて。

 先に俺に気が付いたのは、早苗と呼ばれる里桜の仲の良い同僚だった。

 俺の方を見て、一瞬で顔面を蒼白させて口をぱくぱくと動かす。

 俺がその会社の集まりに近付いていくと、すでに出来上がった里桜が〝あの〟鈴木に抱き着いていた。

 鈴木はこちらに気が付くと一瞬にして顔を青くさせた。どうやら俺のことは覚えているらしい。
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