純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「──以上が今年のハロウィンのイベントになるそうです!では、最後に!藤井くん、ハロウィンならではの台詞をカッコよく!カメラに向かって、お願いします!」
司会者がそう言うと、カメラはドアップで若い俳優の姿を映した。編集でキラキラとした加工が施されている。
……若い俳優の名前、フジイっていうのか。顔は知っていたが、名前をちゃんと聞いたのは初めてだな。ドラマを観ていても、俳優や女優たちの名前までを覚える気はまったく無いからな。
「トリック・オア・トリート。お菓子くれなきゃ、イタズラしちまうぞ……?」
かっこよくポーズを決めながら、いかにも女性が喜びそうなキラキラとした編集とともに放たれた、なんてことないハロウィンならではの言葉。
画面の端っこのワイプに映る会場の客席では、女性の黄色い声が高々に上がっていた。さすがは今流行りの俳優……っていうところか。
里桜もわずかながら「おぉっ」なんて声をあげて、反応しているし。やっぱり、この藤井っていう俳優が目当てで画面に釘付けだったのか……?
真偽はさておき、藤井を見て喜んでいる里桜を見たくはなくて、引き続き画面の方を向いていると……──。
「一夜さん……!」
彼女の名前を呼ぶ声が聴こえた、と思うや否や、自分の身体に衝撃。驚いてみやると、里桜はうさぎのぬいぐるみを放って俺に抱き着いていた。