純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 怪我をしているんだとは思っていた。思っていたけれど……見たまんますぎて、なんと言葉を返したら良いのやら……。

 あっ、いや、無視をすればいいよね。私は左目のことを聞いていないし、向こうが勝手に話し出したんだし。うん。無視、無視。


「……」

「……」


 そして訪れる、静寂。

 な……なんか、気まずい。犯罪者と同じ部屋に……しかも、こんなにも近い位置にいるとなると、緊張どころの問題じゃない。

 自分の心臓は大きな音をたてて脈打っていて、近くにいる桐生さんに聴こえるんじゃないかと心配になるくらいだ。


「……き、桐生さん?」


 静寂に耐え切れなくなった私は、思い切って口を開いた。


「ん?」


 無表情でこちらを見る桐生さん。私を見る真っ黒な目を見ていると吸い込まれてしまいそうで、思わず目を逸らす。


「あの……えっと……」


 思い切って話し掛けたのは良いのだけれど、何を話すのかまでは考えていなかった……。私も、馬鹿だな。


「……」


 発する言葉を必死に頭の中で探す私を、桐生さんはただただジッと黙って待っている。その視線を感じていると、早く何か話さないと……と焦るばかりで、頭の中は真っ白のまま。


「……えっと……」

「……篠原さん」

「は、はい?」

「かわいい」

「……っ?!」


 ぞわわ。また桐生さんのさらりと放たれた言葉に、鳥肌が立つ。
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