純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 ……いや、違うか。

 里桜が誘拐されたことでショックを受けている“俺を見て”、ショックを受けているんだ。

 里桜がいなくて悲しんでいる俺を見て、母さんは悲しんでいるんだよな。知ってるよ。俺の親は昔から異常すぎるくらいに過保護だから。


「いや……警察は情報1つ、得られていないらしい」


 本当……こういう事態なのだから、しっかりとしてほしいよな。里桜の安否が手遅れになったら、どう責任をとるっていうんだよ、まったく。


「そうなの……。里桜ちゃん、早く見付かればいいわねぇ」

「そうだな。じゃあ、俺は私服に着替えて里桜を捜しに出掛けるよ」

「そう……。でも、危ないことはしちゃダメよ?あと、あまり遠くに行くのもダメなんだからね」

「俺はもうガキじゃないんだし、それくらいちゃんと分かってるよ」


 母さんにそう言った俺は、部屋に入って制服から私服に着替えたあと、家から飛び出した。そして、里桜を捜し回る。

 友人に作ってもらった、“里桜を捜しているから、何か情報があればこの電話番号にお電話を”……的なことが書かれている小さなポスターを電柱に貼りながら、俺はそのポスターを道行く人に見せては尋ねた。

 けれど、返事は「知らない」のオンパレード。警察と同様、だれも何も知らないようだった。

 太陽が完全に沈んだ後も、道行く人に聞いて回った。ただひたすらに聞いて回った。しかし、やはり有力な返事は何1つとして得られない。
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