純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 もしかしたら、外ではたくさん笑う人だったりして……。よく笑う桐生さんを想像をしようとしてみたけれど、ダメだ、ぜんぜん想像できない。


「? 桐生さんは……朝食、食べないんですか?」


 私の目の前には朝食が用意されているのに、桐生さんの目の前には朝食どころか飲み物さえ用意されていない。

 朝は食べない派の人、とか?でも、それじゃあ身体によくないんじゃ……。


「……あ」

「え?」

「作るの……忘れていた」


 ぽかん。私は無意識のうちに口を開けてしまっていた。

 へっ?自分の分の朝食を、作るのを忘れていた?私の分はこうして作ってくれたのに?


「……ぷくくっ」

「……篠原さん?」

「あっ、いえ、すみません。桐生さんって意外に抜けているところが……」


 「あるんですね」と言いかけて、私は笑うのと同時に、慌てて自分の口に自分の手を押し当て、制止した。

 さっき、“桐生さんの機嫌を損なわせないように気をつけないと”って、思ったところなのに……。

 最悪、怒った桐生さんに殺されるかもしれないっていうのに。

 血の気が引いていくのを感じながら、桐生さんの顔色を伺う……けれど、桐生さんは相変わらずの無表情だ。

 ……いや、ほんの少しだけ、表情が綻んでいるようにも見える……ような気がする。……どうして綻んだ表情をしているのかは謎だが。
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