純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「ついこの間まで、昔の時の死人のようなままだったんだが……数日前くらいからかな? あまり変わらないように見えるが、表情が前より明るくなったんだ。明るくなったのは、きっとハルカちゃんのおかげだよ。ありがとう」


 まさかマスターからお礼を言われるなんて思わなくて、私は言葉を失った。マスターが笑い終わるのと同時に、奥から桐生さんと司さんが出てくる。


「ハルカちゃん!さっきはホントにごめんね~? めちゃくちゃビックリしたっしょ?」


 両手を合わせて、申し訳なさそうに謝る司さん。……台詞と口調が合っていないのは、気のせいでしょうか。しかも、なんか馴れ馴れしくなっているし。


「はぁ……今度からは気を付けろよ」

「はぁ~い!」


 司さんって金髪だし、ピアスを着けていて見たまんまのチャラ男だけれど、そこまで悪い人じゃない……よね。

 司さんの子供のような無邪気な笑顔を見ていると、そう思えてくるから不思議だ。

 その後、桐生さんはコーヒーを全部飲み、私はココアを全部飲んだ。

 ほとんど桐生さんとは会話しなかったけれど、少なからず、初めて会った時よりは警戒心は解けていた。

 ……私を殺す気でいるんじゃないかという警戒は、まだ、完全には解けていないのだけれど。


「……美味しかっただろう?」


 桐生さんの問い掛けに、私はコクンッと頷いた。口の中には、ココアの甘ったるい風味がまだ残っている。
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