純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
「篠原さん……。君という人は、なんて……」


 ──“お人よしの優しい人”なんだろうか。

 桐生さんは小さく、驚いたかのような呆れたかのような……なんとも曖昧な言葉を発した。

 嫌味に聴こえなくもないけれど、表情はどこか切なげのような、優しげのような……あたたかい表情に見えなくもないかもしれない。

 桐生さんが何を考えていたり、何を思っているのかが分からないから、その対応に困ってしまう。


「少しは……気、晴れたか?」

「えっ……?」

「気分転換に……なったか?」

「は、はい……」


 おそらく桐生さんは、私のことを考えて……私のことを思って、条件付きといえど外に連れ出してくれたんだ。


「ありがとう……ございます」


 どうなることかと冷や冷やとしていたけれど、今日もなんとか無事に1日を終えられそうだ。

 「気分転換になったか?」と尋ねられたので、私は窓の外から見える景色に目をやる。外は当たり障りのない道路で、面白いものなんて何もないけれど……。

 それでも、数日振りに外に出てみて、十分に気分転換になった。それは本当にありがたいと、心の底から桐生さんに対して思う。


「篠原さんの気が済むまで、ここにいて構わないから……」


 桐生さんの言葉に甘え、それからしばらくの間、私たちは喫茶店の中で時間を過ごしていた。
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