純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー
 桐生さんとは特に何も会話はなかったけれど、窓の外の景色を眺めているだけで私にとっては十分だった。

 特に会話のない私達を、マスターと司さんはさぞかし不思議な気持ちで見ていたんだろうか……。


「もう、出ます」

「……そうか」


 私の言葉に立ち上がった桐生さん。それに釣られるように立ち上がる私。マスターにお会計を済ませた桐生さんと共に、私たちは喫茶店を出た。

 これからあの白い部屋に戻るのか……と思うと気が重いので、その間に周りの景色を目に焼き付けながら歩く。

 桐生さんも、さすがに警察にまでは危害を加えないと思うから、こうやって歩いていたら、いずれ私のことを見付けて助け出してくれるかもしれない。

 私はこの辺りが何処なのか、私の家からどれくらいの距離が離れているのか分からないけれど、望みが全くないわけじゃないよね……!


「篠原さん」

「は、はいっ?」


 急に話し掛けられたものだから、ビックリして声が上擦ってしまった。


「他に行きたいところがあるのなら、遠慮なく言って。できるだけそこへ連れて行って、篠原さんの望みを叶えてやりたいんだ」


 ……桐生さんは、どうしてそんなことを言ってくれるのだろうか?

 まぁ、だからといって釈放してくれたり、警察署に届けてくれるわけじゃないのは分かっているけれど……。
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