俺様教師の甘い罠




頬を伝う涙をそっと指先で
拭いながら、困った表情で
私の顔を覗き込む先生。




ああ、もうあの子はいないんだ。




そう思ったら、ホッとして
どうしようもなくて、




なんでこんなこと思うんだろう、って
自分が少し嫌になって、




「 辛かったな・・・
  ごめんな、澪 」




今日は珍しい先生がたくさん見れる。
笑ったり、怒ったり、謝ったり。




いつもならきっとこれだけで
悩みなんて吹き飛んでいくのに
それなのに、










「 ───────────直斗 」




あの子が”なお”と呼んでいた。




すごくすごく嫌で、嫌で。
対抗するみたいに名前を呼んで、
先生の首に腕を回して抱きついた。




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