俺様教師の甘い罠
聞く前に会ってしまった。
少しだけ知ってしまった。
きっとそれが、
私が頷けない理由だと思う。
話を聞くだけならできる。
だってそれは過去で、
もう今は何でもないんだよ、と
そう言われてしまえば
きっと私は大丈夫だった。
何も疑わずに居られた。
「 ・・・・直斗 」
「 ん? 」
エレベーターに乗り込んで
それでもまだ抱き上げられたままで。
頭を横切った彼女のあの表情と
先生を呼ぶ声と、あの場面。
2人の唇が触れ合って、重なって、
距離はゼロで、
「 ・・・・・っ 」
彼女が触れたこの唇に
さっきまで私が触れていた。