俺様教師の甘い罠




”そのまま”と言われたけど
やっぱり真っ直ぐ見ることは
できなくて。




先生の胸に顔を押し当てて
声を押し殺して泣いた。




聞こえるのは先生の声と、心音。




1番落ち着くこの場所で、
1番聞きたくない話を。




「 最近まで、塾でバイトしてた 」




最初は、それだった。
この話の中には聞きたくない
先生の過去と、私が聞きたい
私の知らない先生のことが
詰まっている。




聞かなきゃ、聞かなきゃ、と
体中の全神経を先生の声に
集中させた。




そうしないと、きっと私は
耳を塞いでしまうから。




「 その時、高3だった愛に会って 」




愛さんは、私の2つ年上で
勉強が大の苦手だったらしい。




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