俺様教師の甘い罠




「 この家に居ると、そのこと
  思い出して辛いだろ 」




まだ1年も経ってない。
前に会ったとき彼女は
そう言っていた。




それでも、傷ついた体と心を
ずっと同じ場所に置いていた。




何ヶ月経っても、ここに、ずっと。




「 帰る場所がないんじゃないだろ 」


「 ・・・・・ッ・・・ 」


「 自分で帰る場所を失くしてるだけだろ 」




どんな理由であっても、
彼女の記憶に刻まれた
”中絶”は浅い傷なんかじゃなくて、




今もきっと、その傷が疼いて痛んで
彼女は苦しんでる。




「 お前が帰らないだけだろ?
  居心地悪いこんなところに居て
  それで俺がお前を責めるのを
  ずっと待ってたのか? 」




コクン、と彼女は小さく頷いた。




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