【完】空とキミ ‐十朱 朔也‐
……。
夜は更けていき、酒飲みの二人は向かい合って楽しそうに話している。
「龍輝くん、その彼女のこと愛してるんだねぇー」
「ん。 あんまり言わねーから、ちゃんと伝わってないかもしれないけどな」
…話題はいつの間にか、龍輝の彼女…――真由のことになっていた。
「今でもアイツに触れるのは怖い。
触れた瞬間に、こう…泡のように消えちまうんじゃないかと思ってさ。
まぁ、実際はそんなことなんて無いけどな」
「あーわかるー。
私も彼氏と居る時って凄く幸せだけどさぁ、同時にメチャクチャ不安なんだよね。
朝、目が覚めた時に“全部が夢だった?”なんてしょっちゅう思う!」
「うん、学校行ってアイツに会うまですげー不安。
会って手ぇ握って、そこでやっと“あぁ夢じゃない”ってホッとする」
「だよねぇー」
……やっぱり二人は話が合うらしい。
俺が居ることすら忘れてるみたいで、キャーキャーと盛り上がってる。
「でも龍輝くんってさぁ、あんまり自分からは連絡とかしない人でしょ?」
「おー、なんでわかんの?」
「同じ“笠井”だからわかる!ってのは嘘だけど。
なんかねー、龍輝くんて元カレに雰囲気似てるんだよねぇ。
連絡が来たら返す。それでいいや、って人はそのうち愛想尽かされちゃうぞ?」
「あ、それで彼氏と別れたんだ?」
「そー。だから気を付けなー?
自分の気持ちとかもちゃんと伝えた方がいいよ?
“言わなくてもわかるだろ”って男は思うかもしれないけど、女の子は言ってもらいたいもんなんだから!!」