【完】空とキミ ‐十朱 朔也‐
『…あっ、ねぇあのお金さぁ、今度また私が行った時にパァッと使おっか!
一緒に使って一緒に楽しむ、それなら文句無いでしょー?』
……車が脇を通り抜けていくのと同時に音が戻り、マコもまたいつものように笑う。
『今度行く時まで使わずに取っとけよー?
じゃ、おやすみ!! 気を付けて帰ってねー!!』
…俺が口を挟む間も無く電話は切れる。
「…アンタはいったい、なんなんだ」
もう繋がってない電話を耳にあてたまま小さく言う。
…マコ。
アンタはなんなんだ。
馬鹿な女だと思った次の瞬間に、なんであんな風に言う?
……「幸せだった」とか「ありがとう」とか…、そう思ってたのなら、
なんであんなに寂しそうな声を出す?
マコ。
そんな風に言われた俺は、どうすればいいんだよ。
「………」
…携帯を耳から外し、画面を見つめる。
そして…、 マコの番号を引っ張り出す。
コール音が、 1回…、2回…、3回…、4回…、
『…もしもし?』
…5回目の途中で、ようやくマコが出る。
その声を聞きながら、スゥッと息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
「…今度、そっちに行く」
『え?』
「俺が行く。
だから住んでる場所教えて」