【完】空とキミ ‐十朱 朔也‐
△△市…? それって…、
「…電車で30分の、あの△△市?」
『…うん』
………。
「…あのさ、彼氏と遠距離って言ってたよね?
俺はてっきり、片道2、3時間とか、それよりももっと遠くに住んでるのかと思ったんだけど?」
『あはは…、ごめんね?
遠距離って響きが格好良くて、つい』
「…つまり、電車を乗り換えるとかそういうのも嘘だった。と?」
『はい。ごめんなさい、嘘でした』
……はぁ…。
「…アンタはほんとに、なんなんだ」
『へ?』
「…いや、なんでもない。
それよりも、明日会える?」
『え? あ、うん』
「じゃあ明日行く」
…言いたいことが山ほどある。
と言うか、山ほど出来た。
明日会って、全部ぶつけよう…。
「明日9時過ぎ、そっちに着くように出るから」
『え、早っ!!』
「…早くない」
『んー、まだ寝てるかもよ?』
「…じゃあ10時でいい」
『お、それなら頑張る!!』
…頑張る、って…頑張るほどのものか?
「…まぁいいや、△△駅で降りれば平気?」
『うん、オッケー!』
「じゃあ明日、△△駅で」
そう言葉をかけ、ため息と共に電話を切る。
…その後すぐ、マコからメールが入った。
【 おやすみくらい言ってから切ってよ(笑) 】
……そういえば、用件だけ伝えて切ったかもしれない。
【 じゃあ、おやすみ 】
とメールしたら、すぐにマコから返事が来た。
【 おやすみダーリン 】
…なんだそりゃ。
そう思ったけれど、返事をしたら面倒臭くなるような気がしたから、何も返さずに携帯を閉じた。
明日また、マコと会う。
…また疲れるんだろうな…。
……だけどまた、彼女の笑顔を見ることが出来る。
そう思ったら、なんとなく、楽しみになってきた。
…なんで俺は、彼女の元に行くんだろう?
なんで楽しみにしてるんだろう?
彼女と会えることが、なんで嬉しいんだろう?
「…アンタはいったい、なんなんだ?」
…それに対する答えは、どこからも聞こえては来ない。
そんなのわかってる。
わかってるけれど、俺はまた言葉を続けた。
「…俺は、彼女とどうなりたいんだ?」
……それに対する答えも、返ってくることはない。