【完】空とキミ ‐十朱 朔也‐


…で。




「……おぇ」




…馬鹿な飲みっぷりのせいであっという間に酔ったらしく、フラフラのマコの背中をため息混じりでさする俺。
という妙な構図が出来上がった。


「…ろくに食べずに飲み始めるからこうなるんだよ。
かと思えば急に要らないくらい食べ始めるし」

「すみません…反省してま…おぇ…」


……人(オレ)の顔を見て「おぇ」は無いだろ。

まったく、何でこんなことをしなくちゃならんのだ…。




「…こんなんじゃあ、一晩中アンタの面倒を見なくちゃいけないかもな」

「わーいお泊まりばんざー…うぇ…」


「…いいから喋るな馬鹿」


背中をさすりつつ、もう片方の手にコップを持って水を飲ませていく。




「…ほんと、すみません…」

「いいから」


「うぅ…こんな哀れな姿を晒すなんて……おぇ…」

「だから喋るなって。
何も考えずに静かにしてな?」

「はい…」




苦しそうに息をするマコ。

トイレと部屋を何度となく行き来し、そのうちトイレから離れなくなった。


そんな馬鹿女の背中をさすり続け、ようやく落ち着いたのは夜11時過ぎ。


むにゃむにゃと気持ち良さそうに眠るマコを見つつ、残っていたワインをちびちびと口に運ぶ。


もう今日はここに泊まろう。

そう思ったのは1時間前で、マコが眠りにつくかつかないかの頃だった。




その頃にはだいぶ落ち着いてきていたけれど、ふとした瞬間に襲ってくる吐き気。
それと闘うマコを見ていたら、なんとなく一緒に居た方がいいような気がした。




「…ほんとにアンタは、馬鹿な女だ」


気持ち良さそうに眠ってるマコの髪をそっと撫で、小さく笑う。




「…でもやっぱり、いい女だ」




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