おさななじみ
 いいたいことはたくさんあるのに言葉が出てこない。
 
「妃那、泣いてるの?」
 
「泣いてないよ」
 
 マフラーの中に顔をうずめて泣き顔を見られないように隠した。
 
「…いじっぱり」
 
「なによ!」
 
 声を上げた拍子にマフラーが外れた。
 
「うわ~、顔ぐっちゃぐちゃ」
 
 洸輝が声を立てて笑った。
 
「ひどい!もう知らない。さよなら!」
 
 あたしはマフラーで顔を覆って背を向けて歩き出す。
 
 最悪だ、最後の別れがこれなんて。
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