おさななじみ
 何を考えていても足が勝手に進むのは何度も何度も通った場所だから。
 
 
 小さいころ洸輝と遊んだ丘の上の原っぱ。
 
 大きな桜の木があって春には薄いピンク色の花びらを使ってままごとをした。
 
 夏には青々と茂る葉の木陰で昼寝をして、秋には落ち葉を拾って…
 
 あふれてくる涙をマフラーでぬぐって、あたしは雪を踏みしめる。
 
 

 丘の上はまだ冬だった。
 
 吹き付ける風は冷たくて涙で濡れた頬がひりひりと痛んだ。
 
 

 春なんか来なければいい。
 
 このままずっと……
 
 
 時計の針が、少しでも遅くなるのを願って目を閉じる。
 
 手を繋いで歩いている小さいころのあたしと洸輝。
 
 お願いだからもう、少しだけ…。
 
 
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