空に放ったキミへの想い
須藤美琴(スドウ ミコト)は悩みの種だった。人形のように整った顔立ち、長い髪、ピアス…。でもその顔に表情はなく、寡黙で何を考えているのか分からない…。生徒からも孤立した存在だった。

いつもと変わらない町並み、人、風景。行き交う人々。何がそんなに楽しいの?たいして意味もないのによく笑えるね。私の目は何も色を写さない。止まった時間、一人取り残された自分。いつになったら動くの?ねぇ、だれか動かしてよ!なんて…ね。くだらない世界に生まれて、くだらない人生に流されて…。どこに辿り着くのやら。落胆した笑みを浮かべて歩き出したその時、

「ねえ、待ってたんだよぉ!ユウコちゃ~ん♪」知らない男に肩を掴まれた。「はぁ?アンタ誰?」振り向くと酔っ払いのオヤジがいた。「ヒック、おじさんの事忘れちゃったの~?ひどいよユウコちゃ~ん。」「私ユウコじゃないから。」「待ってよぉ。じゃあキミでいいからおじさんと遊ぼう?お礼するからさぁ。」そう言うと男はこれで…と指を二本立ててピースをした。二万…?「こんなんでどう?」男は気持ちの悪い笑みを浮かべている。

プツリ…。美琴の中で何かが切れるのを感じた。「あ、アンタみたいなヤカラがいるから!!」そう叫ぶと男に殴りかかった。アンタみたいのが世の中汚くしてるんだよ!アンタたちみたいのが!!「ヒィっやめてくれ!頼む」美琴は止まらなかった。気が付いたら自分も相手もボロボロになっていた。「たっ、助けてくれぇ~!」男は逃げるように去って行った。
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