大好きな変な家族たち。◆


「あれーー?奈津美ちゃん。志保は?」

「きゃっ。建志君っ?!」

不意に声がかかる。
志保が職員室に呼ばれて、わたしは教室で待っていた時だ。


「あのっ。志保は…職員室にーー」
 
「ありがとう。じゃ、一緒に まとうか?」

にっこり甘い笑顔をした建志君はやっぱり素敵で、
半分ぐらい何を言ったか舞い上がって覚えてないけど、
やっぱり、声も素敵だなー。


「でね。奈津美ちゃん?」

「えっ?はっはい??」

いけない。声に聞き入ってて内容が入ってこなかった。
そんな様子がわかったのか、建志君はくすくす笑った。

「奈津美ちゃん。
 僕のこと好きなの??
 それとも、僕の自意識過剰??」

「え?あのっ…」

思わぬ発言で、おもいっきりパニックに陥る。

ふと、建志君が綺麗な指で頬にそっと触れるものだから、
心臓の音が聞こえてしまわないか
そんなことが気になった。


「でもねー。
 
 僕の理想の恋愛はね、『政略結婚』なんだー」

ニコニコ笑う建志君に思わず見惚れてしまう。

「そうなんだ。素敵ね」

仕草も、表情も、その吐息にさえもドキドキしてしまう。
女がひきつけられるフェロモンを出してるんだわ。きっと。



「え?…だからー」

建志君が何か言いかけた時

「奈津美。建志!」

志保がただいまーと言いながら、教室へと戻ってきた。
あぁ。せっかくの二人っきりのおしゃべりもここでおしまいか。
残念。




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