桜の咲く頃に
入っていくと、公衆トイレ特有のアンモニア臭がつ~んと鼻を突いた。
ちゃんと電気がついているのに、なんとなく薄暗い。
物音一つ聞こえてこない。朝のラッシュ時だというのに、人の気配がしない。
数日前下見に来た時と同じだ。地下道の突き当たりにあるからかなあ? 何故かここはいつもすいているらしい。
口元に薄気味悪い笑みを浮かべる。高鳴る鼓動を抑えきれない。
一番奥の個室に向かおうとしたとき、コツンコツンとハイヒールの靴音が近づいてきた。
まさか、入り口を間違えて隣の女子トイレに入っちまったんだろうか?
ふと心に浮かんだ疑問は、振り向く前にこなごなに砕け散っていた。
突然、個室のドアが開いて、早足で出てきたドキュンと肩がぶつかった。
次の瞬間、右膝の裏側に不意打ちを喰らい、体制を崩した途端、強烈な衝撃とともに脳天に何かが降ってきた。
遠退いていく意識の中で知覚したものは、何故か濃密な薔薇の香りだった。
「……大丈夫ですか?」
意識を取り戻したのは、倒れているところを巡回中の警備員に発見されたときだった。
ちゃんと電気がついているのに、なんとなく薄暗い。
物音一つ聞こえてこない。朝のラッシュ時だというのに、人の気配がしない。
数日前下見に来た時と同じだ。地下道の突き当たりにあるからかなあ? 何故かここはいつもすいているらしい。
口元に薄気味悪い笑みを浮かべる。高鳴る鼓動を抑えきれない。
一番奥の個室に向かおうとしたとき、コツンコツンとハイヒールの靴音が近づいてきた。
まさか、入り口を間違えて隣の女子トイレに入っちまったんだろうか?
ふと心に浮かんだ疑問は、振り向く前にこなごなに砕け散っていた。
突然、個室のドアが開いて、早足で出てきたドキュンと肩がぶつかった。
次の瞬間、右膝の裏側に不意打ちを喰らい、体制を崩した途端、強烈な衝撃とともに脳天に何かが降ってきた。
遠退いていく意識の中で知覚したものは、何故か濃密な薔薇の香りだった。
「……大丈夫ですか?」
意識を取り戻したのは、倒れているところを巡回中の警備員に発見されたときだった。