桜の咲く頃に
店のドアを出て、千佳は階段の踊り場で加恋の肩越しに携帯の写真を見る。
「あれ、ツーショットが何枚かあるよ。お、チャラ男じゃなくて、イケメンだ! ウインドとチェリーだって! イケイケカップルって感じだよね。でも、男の表情がちょっと暗いかな? 加恋、ちょっと何してるのよ」
「発信履歴見るのよ。え、同じ番号ばっかじゃん。相手は彼女かな? 今度は着信履歴見ようっと。あれ、空っぽ。削除したのかなあ? でも、発信履歴残ってるから、削除したとは考えにくいし……こんなに彼が掛けてるのに、どうして彼女掛けてこなかったんだろう? ツーショット見る限り、両想いって感じなのにね」
「もしかして、彼女の身に何かあったんじゃ?」
「病気とか事故とか? でも、それだったら、彼女の家族と連絡がつけば、わかることでしょう、何度もしつこく掛けなくても」
「じゃあ、彼女一人暮らしだったりして」
「というより、普通そんな時って電話なんかしないで、見舞いに行くよね。それができない理由でもあったのかなあ?」
「だったら、事故にしても病気にしても、倒れたのは彼のほうかもしれない。う~ん、あたしたち考え過ぎじゃない? 単なる彼女の心変わりだったりして」
「じゃあ、このイケメン相当未練がましい奴ってこと?」
「ちょっと、加恋、何してるのよ?」
「とりあえずこの番号に掛けてみようかなって……」
加恋は携帯を耳に当てたまま千佳を見つめる。
「つながんないの?」
「『お客様のお掛けになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめになってもう一度お掛け直しください』だって」
「メール履歴は?」
「送信は空っぽ。削除したのかなあ? 着信は1件だけ残ってる。2月24日9時4分。『今夜7時決行。迎えにいく』。相手の名前は出てない」
「それってちょっとやばくない? ケータイ利用した犯罪に関わってたりして。普通ケータイ落とすと、すぐケータイ会社に連絡して利用停止にするよね、悪用されることもあるから」
千佳は怪訝そうに目を細める。
「利用停止の連絡しなかったってことは、もしかして……」
加恋が考え込むような仕草をすると、一瞬二人の間に沈黙が流れた。
それを破ったのは千佳のほうだった。
「……彼はもうこの世にいないか、行方不明になってるか……もしかしたら……彼女の身にも何か起こったのかもしれない」
「あたしそろそろ行かなきゃ。今日はうちで食べるって言ってきたから……」
そう言いながら、加恋は階段を下り始めた。
「あたしたちが知らないだけで、これって事件だったりして……あたし後でぐぐってみるよ」
千佳は急に加恋に歩み寄り、声を潜めた。
「あれ、ツーショットが何枚かあるよ。お、チャラ男じゃなくて、イケメンだ! ウインドとチェリーだって! イケイケカップルって感じだよね。でも、男の表情がちょっと暗いかな? 加恋、ちょっと何してるのよ」
「発信履歴見るのよ。え、同じ番号ばっかじゃん。相手は彼女かな? 今度は着信履歴見ようっと。あれ、空っぽ。削除したのかなあ? でも、発信履歴残ってるから、削除したとは考えにくいし……こんなに彼が掛けてるのに、どうして彼女掛けてこなかったんだろう? ツーショット見る限り、両想いって感じなのにね」
「もしかして、彼女の身に何かあったんじゃ?」
「病気とか事故とか? でも、それだったら、彼女の家族と連絡がつけば、わかることでしょう、何度もしつこく掛けなくても」
「じゃあ、彼女一人暮らしだったりして」
「というより、普通そんな時って電話なんかしないで、見舞いに行くよね。それができない理由でもあったのかなあ?」
「だったら、事故にしても病気にしても、倒れたのは彼のほうかもしれない。う~ん、あたしたち考え過ぎじゃない? 単なる彼女の心変わりだったりして」
「じゃあ、このイケメン相当未練がましい奴ってこと?」
「ちょっと、加恋、何してるのよ?」
「とりあえずこの番号に掛けてみようかなって……」
加恋は携帯を耳に当てたまま千佳を見つめる。
「つながんないの?」
「『お客様のお掛けになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめになってもう一度お掛け直しください』だって」
「メール履歴は?」
「送信は空っぽ。削除したのかなあ? 着信は1件だけ残ってる。2月24日9時4分。『今夜7時決行。迎えにいく』。相手の名前は出てない」
「それってちょっとやばくない? ケータイ利用した犯罪に関わってたりして。普通ケータイ落とすと、すぐケータイ会社に連絡して利用停止にするよね、悪用されることもあるから」
千佳は怪訝そうに目を細める。
「利用停止の連絡しなかったってことは、もしかして……」
加恋が考え込むような仕草をすると、一瞬二人の間に沈黙が流れた。
それを破ったのは千佳のほうだった。
「……彼はもうこの世にいないか、行方不明になってるか……もしかしたら……彼女の身にも何か起こったのかもしれない」
「あたしそろそろ行かなきゃ。今日はうちで食べるって言ってきたから……」
そう言いながら、加恋は階段を下り始めた。
「あたしたちが知らないだけで、これって事件だったりして……あたし後でぐぐってみるよ」
千佳は急に加恋に歩み寄り、声を潜めた。