右手に剣を、左手に君を



心臓が、バクバクと高速で鼓動を打つ。


キスなんて……高2になった今でも、普通の人間としたこともないのに。


中学の時彼女はいたが、一緒に帰るだけで終わってしまった。



「初めてなのに……」


「コウはそこそこイケメンなのに、雅がそばにいるから、かすんじまうんだよなあ。

まあいいや。さっさと一発やっちまえ!」



健太郎が笑いながら言った。


くそったれ。お前だって雅だって、彼女いないじゃないか。


俺は、布団に寝ている龍神の姫を見下ろした。


…………可愛い。


まぶたを閉じてて、こんなに可愛いんだから、開けたらさらに……。


いや、過度な期待はよそう。


期待?何言ってんだ、俺。


もういい。


さっさとやって、釈放されよう。


どうせ、こんなことで目覚めたりしない。


俺は、覚悟を決めた。


ごくり、と唾液が喉を通っていく。


手のひらには汗がにじんでいた。



「……目覚めよ、善女竜王……」



情けない事に、少しだけ震える声でつぶやいて。



眠る彼女の、桜色の唇に。



そっと、自らの唇を触れさせた。




< 10 / 449 >

この作品をシェア

pagetop