右手に剣を、左手に君を
心臓が、バクバクと高速で鼓動を打つ。
キスなんて……高2になった今でも、普通の人間としたこともないのに。
中学の時彼女はいたが、一緒に帰るだけで終わってしまった。
「初めてなのに……」
「コウはそこそこイケメンなのに、雅がそばにいるから、かすんじまうんだよなあ。
まあいいや。さっさと一発やっちまえ!」
健太郎が笑いながら言った。
くそったれ。お前だって雅だって、彼女いないじゃないか。
俺は、布団に寝ている龍神の姫を見下ろした。
…………可愛い。
まぶたを閉じてて、こんなに可愛いんだから、開けたらさらに……。
いや、過度な期待はよそう。
期待?何言ってんだ、俺。
もういい。
さっさとやって、釈放されよう。
どうせ、こんなことで目覚めたりしない。
俺は、覚悟を決めた。
ごくり、と唾液が喉を通っていく。
手のひらには汗がにじんでいた。
「……目覚めよ、善女竜王……」
情けない事に、少しだけ震える声でつぶやいて。
眠る彼女の、桜色の唇に。
そっと、自らの唇を触れさせた。