右手に剣を、左手に君を
走ってきたせいで、ただでさえ乾いていたのどが。
さらに水分を失い、ひりひりと痛む。
胸は不規則なリズムを刻んだ。
「どうかな?」
「えっと、でも……」
「野田が言うには、御津とキミが恋仲なんだそうだけど、本当?」
「えっ!?コウくんと私が?!」
「……違うみたいだね」
尾野が苦笑した。
あの日スーパーでついた嘘が、あっさり見破られたのだ。
「うん。手とかつないでたりするけど、恋仲だなんて、そんな……」
てへっと、のん気な声が聞こえた。
……ヤバイ。
完全に、出て行くタイミングを見失った……。
「じゃあ、フリーなんだね。
野田とつきあってくれるね?」
「ふりい?」
疑問に思うのはそこじゃない!!
あぁもう、さっさと断れよ!!
「あの……ごめんなさい。
『ふりい』って何かよくわからないけれど、
よく知らないお方と恋人になれと言われても、無理です」
渚は小さな声で、しかしきっぱりと、そう言った。