右手に剣を、左手に君を
なんとも情けない言い訳をしてしまった。
しかし、そんな事は言っていられない。
「渚、野田の事、好きか?」
「えっ?ううん、全然」
素直な渚の答えに、野田はグサリと傷つけられた顔をした。
気の毒だが、これは完全にそっちが悪い。
純粋な愛の告白ならまだしも、人に頼んだ上に、やらせてくれればいいって、どういうことだよ。
「だってよ。交渉決裂だ。悪かったな」
俺は渚の手をとり、引っぱった。
渚は素直に俺についてくる。
「ちょっと、御津」
早くその場を去りたいのに、尾野に呼び止められ、思わず振り向いてしまった。
「なんだよ」
「横暴じゃないか。
お前は関係ないだろ?」
「それを言うなら、尾野だって関係ないじゃないか」
「なくはない。俺は正式に、野田に援助を頼まれたんだ」
なんだそりゃ!!
「やらせてくれって頼むのに、人を使うかよ。
そんなやつに、大事な……親戚を、はいどうぞと渡せるか」
大事な親戚というのも、不自然な表現だが。
俺にはそれが精一杯だった。