右手に剣を、左手に君を
教室に戻ると、雅がホッとしたような表情を見せた。
「大丈夫だったか、渚」
「大丈夫だったかじゃない。
なんで一人にしたんだ」
「それは……」
雅は説明を始めた。
放課後、俺が職員室から帰ってくるのを、三人で待っていたら。
「健太郎が米倉さんに誘われ、どこかへ消えてしまった」
「米倉さん?何の用なんだ」
「さあ、無粋な質問かと思って聞かなかった」
さすが、モテる男は違うぜ。
「その後、尾野に渚が呼び出された。
俺はお前の持ち物を見張るために、ここにいてくれと渚に言われた」
最後の言葉は言いにくそうだった。
俺の鞄を置き去りにしたら、他の誰かに何をされるかわからないというわけか。
「そうか……ありがとう」
俺は素直に二人に礼を言い、鞄を取った。
「健ちゃんはまだ戻らないの?」
「あぁ……取り込み中なんだろうか」
「取り込み中?」
「もう、今日はその話題やめようぜ……」
まさか米倉が健太郎に惚れたなんてことはないだろう。
俺は女の子の事はサッパリだが、それは何となくそう思う。