右手に剣を、左手に君を
黒い羽が幾千の刃の竜巻となり、俺を狙う!
「くそ……っ!健太郎!!起きろ!!」
叫びながら、何とか剣で致命傷を防ぐ。
しかし耳元では、相変わらずごうごうと音がしていた。
羽が、俺の周りを飛び回っているのだ。
「雅……!」
その隙間から、雅が渚を振り払うのが見えた。
渚は床に叩きつけられた。
「渚!!」
くそ……!!何とかしなければ……!!
もがけばもがくほど、こちらの身体が無駄に傷ついてしまう。
しかし、俺が何とかしなければ……!
雅の身体は、玉藻に近づいていく。
相変わらず意識が戻らない健太郎に、十束剣を向けながら……。
「雅!!」
「こう、いち……!」
「!!」
雅の苦しみに歪んだ声が、羽の隙間から聞こえた。
「止めてくれ、恒一!!
俺はどうなっても、構わないから……!!」
なんだと?どうなっても構わないだと?
……バカな事を、言うな!!
雅が、十束剣を振り上げる。
俺は、その瞬間──。
防御を捨て、羽の壁にぶち当たっていった。