右手に剣を、左手に君を
「うおおおおおおっ!!」
羽の刃が、体中を切り裂く。
「邪魔だあああっ!!」
しかし俺は、その中を突き進んだ。
草薙の剣を、構えたまま。
「雅!!」
ずぼ、と音がして、やっと羽の渦から抜け出した。
しかし、時は既に遅く……。
十束剣が、健太郎に向かって振り下ろされる!!
「!!」
──時間が、止まってしまったように思えた。
振り下ろされたはずの十束剣は、健太郎の身体に届かなかった。
代わりに……。
「渚……?」
いつの間にそこにいたのか。
渚が、健太郎の前にひざをついて。
両手の平で、十束剣を受け止めていたのだ。
玉藻が驚きで、声を失くした瞬間。
渚が、雅に語りかけた。
《人の子よ!妖の声から開放されよ!》
それは、もう……。
いつもののん気な渚の声ではなかった。
清浄にして高貴な、神の声だった。