右手に剣を、左手に君を
渚がその細い腕で、十束剣を白刃取りしたまま、床に転がした。
剣を手放した雅の身体はがくりと揺れ、しりもちをつく。
「……私の呪いを解いた、ですって?」
今起きたことが信じられない玉藻は、数歩後ずさる。
俺はそのスキに、仲間達のもとに駆け寄った。
すると……。
茶色に変えていた渚の髪の毛が、もとの銀色に戻っていく。
瞳は青い海の色に。
その光景を見た玉藻が、また後に下がった。
「まさか……」
渚は構わず、健太郎に話しかける。
《目覚めよ、人の子よ》
そう言うと、横になっている健太郎の耳に唇を寄せ。
ふわ、と息を吹き込んだ。
すると、健太郎のまつ毛が細かく揺れ……。
まぶたが、ゆっくりと開いた。
「……はれ?」
「健太郎!」
「ここはどこ?わたしは…だれ?」
「バカやろう!!」
寝ぼけた健太郎の頭を、ぽかりと殴ってやった。
「なんらよほほ~」
……いつもはやり返してくるのに、健太郎はフニャフニャのままだった。
どうやら、戦えそうにない。
「……まさか、龍神の姫か……?」
一瞬の和やかな雰囲気ははすぐに打ち壊された。
いつの間にか、迦楼羅と玉藻が舞台に並んで、俺達をにらみつけていた。