右手に剣を、左手に君を
「まさか、アンタまで現代に蘇っていたとはね……
しかもそんな人の身体を模して」
「いや、実際に見たことはないが、美人だったと記録がある。
善女竜王に、間違いないだろう」
失礼なほどまじまじと自分を見つめる二人に、渚は向かいあった。
「いかにも。私は善女竜王。
父なる海神・龍神の娘」
凛とした声が、響き渡る。
それだけで、空気が浄化されていくようだった。
「妖達よ。何故、また人間達を苦しめるのです。
あなた達は空亡が封印された後、闇の世界に帰り、大人しくしていたではありませんか。
私が今まで目覚めさせられなかったということは、そういう事でしょう?」
「大人しくねぇ……まあね、あなたの言う通りだわ。
一応、表立って目立つ事はしなかったわね」
「ならば何故今さら、空亡を復活させてまで、人間達を滅ぼそうとするのです」
「…………」
玉藻が何か言いかけたが、迦楼羅がそれを制した。
「善女竜王よ……あなたこそ、どうしてそこまでして人間の肩を持つのだ。
あなたはより我らに近い存在ではないか」
「……違う。
神から妖に落ちたものもいる。
神になり損ねて、妖になってしまったものもいる。
しかし私は、違う」
「そういう意味ではない。
我々は、大昔から共通しているという意味だ」
「何が言いたいか、わかりません」
迦楼羅はため息をついた。
渚はどうしても、妖と相容れる気がない事を察したのだろう。