右手に剣を、左手に君を
「しょうがない……」
迦楼羅が、笛を構えた。
それを見て、俺達は神剣を構えなおす。
健太郎も何とか立ち上がり、布都御魂を出現させた。
彼は状況についていくのが精一杯と言う顔をしている。
「とにかく、攻撃させるな!!」
「おう!」
「皆、待って!!」
渚の声は、ちゃんと届いていた。
しかし、俺達は迦楼羅の方へ走り出す。
攻撃させてはならない。
もう、仲間を傷つけさせるわけにはいかない。
「行くぞ!!」
再び、草薙剣で雷鳴を導く。
答えるように、雅は風を、健太郎は炎を、
その神剣にまとわせた。
「食らえぇぇぇぇぇっ!!」
俺達は同時に、迦楼羅に向かって、
全ての霊力を放つ!!
「皆!!」
渚の声は、轟音に書き消される。
雷と風、炎がそれぞれ音を立てながら迦楼羅を襲う!!
「ぐ……っ」
しかし迦楼羅は、簡単には倒れない。
その黒い羽根で壁を作り、すさまじい攻撃に耐えていた。
「く、あああっ!!」
俺達はありったけの霊力を剣に与えるが……。
「……こんな攻撃で……!」
なんと、俺達の全力の攻撃に耐えるのに精一杯と思われた迦楼羅が、
ゆっくりと横笛を構え、妖気を送りこんだ!
「げ……っ!」
健太郎が小さくうなった。
まさか、反撃されるとは思わなかったのだ。
横笛から出てくるのは、穏やかな笛の音ではなく。
全てを焼き付くす、地獄の業火。