右手に剣を、左手に君を
この前より、一回り大きな炎の波が、
雷も風も火炎も、押し返そうとする。
こうなれば、持久戦だ。
先に力が尽きた方が、負ける……。
「ぐ、あああっ!」
草薙剣をにぎった腕の傷が、開く。
そこからぷし、と血が吹き出した。
霊力を使い過ぎて、肉体が崩壊しそうになっているのだ。
「コウ!」
「恒一!」
雅と健太郎がそれに気づき、心配して声をかけてくる。
その二人も、玉藻に精神を侵され、消耗していた。
額から玉のような汗が吹き出している。
「だ、いじょう、
うぐ、ああああっ!」
大丈夫と言おうとした口から、悲鳴が漏れた。
皮膚が破け、骨が軋む。
痛みのせいか、視界が一瞬、かすんだ。
そして他の二人が、こちらに意識を傾けてしまった瞬間――。
「……終わりだ」
迦楼羅が低い声と共に、
さらなる強大な妖気を放出した。
おそらく、相手にとっても、これが最後の妖力なのだろう。
炎は俺達の目前まで押し寄せる。
他の二人も、その熱に溶かされそうな苦痛を、なんとか耐えていた。
ここで、俺が倒れたら……。
そんなわけにはいかない。
しかし、もう膝に力が入らない。
ここまでか……。
そう、諦めかけた時。
背後から、水音がした。